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【サエズリ図書館のワルツさん (1)】細々と生き残る本の存在意義

サエズリ図書館のワルツさん (1)(紅玉いづき)

 さえずり町にある私立図書館、サエズリ図書館。その責任者にして特別探索司書は若い女性だ。そして、もはや他には残存していない貴重な本を惜しげもなく一般公開し、貸し出している。その図書館に収蔵されている本を介して、人々は様々な思いを感じ、交流して行く。




書評


評価:☆☆☆☆☆

 さえずり町にある私立図書館、サエズリ図書館。その責任者にして特別探索司書は若い女性だ。そして、もはや他には残存していない貴重な本を惜しげもなく一般公開し、貸し出している。その図書館に収蔵されている本を介して、人々は様々な思いを感じ、交流して行く。


「サエズリ図書館のカミオさん」
 朝の占いは最悪。せっかく作ったお弁当は忘れる。仕事ではお局様に怒られ、ファーストフードの店は駐車場がいっぱい。そして極めつけは、たまたま入った駐車場で車をぶつけてしまう。そんな上緒さんが車の持ち主を探すために入った建物は、今では珍しい図書館、私立図書館だった。
 その図書館、サエズリ図書館の責任者で特別探索司書だという若い女性の名は、割津唯。彼女に勧められて、初めて本を手にし読んでみたカミオさんは、直ぐには本の内容が理解できなかったけれど、ワルツさんや図書館の利用者である岩波さんと交流して行くうちに、本の面白さを発見していく。だがそこに、貴重な本の一般公開を即時中止すべきだという老人が現れる。


「サエズリ図書館のコトウさん」
 仕事にのめり込みすぎて離婚することになり、来年中学生になる娘の親権も奪われた古島さんは、娘と買い物に行く約束を破ってしまい、サエズリ図書館へとやってきた。そこでワルツさんを捕まえ、リファレンスサービスを強要する。
 そんなコトウさんは、図書館で金髪の小さな兄妹アダムとエヴァに出会う。本を抱え、学校に行っていないという彼らに近づこうとするコトウさんだが、兄妹には拒否されてしまう。コトウさんには彼らの残した言葉が耳に残った。


「サエズリ図書館のモリヤさん」
 かつてサエズリ図書館に本を寄贈した森屋新郷朗の孫のモリヤさんがやってくる。彼はワルツさんに対し、祖父の寄贈した本の即時公開停止を求めてくる。その間、モリヤさんは寄贈した本を一人で読みたいという。
 だがワルツさんはその要求を即座に拒否。モリヤさんは利用者として本を借りていく。そしてその本を返しに来るのだが、カミオさんは本の異変に気づいてしまった。


「サエズリ図書館のワルツさん」
 ワルツさんのパパの割津義昭は、著名な脳科学者であった。そして消滅しつつあった本を集めていた。そんな彼は晩年にワルツさんという娘を得る。
 そんな由来を持つサエズリ図書館から、一冊の本が盗まれた。厳重なセキュリティを突破して盗まれた本の行方を検索したワルツさんは、それが都市部にあることを知る。都市部に向かうため、電車を乗り継ぎ、ヒッチハイクをしてたどり着いたそこには、戦争の傷跡と、そこで暮らさざるを得ない人々の哀しみがあった。


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